香水と聞いてまず最初に誰もが思い浮かべるのは「バラの香り」ではないでしょうか。

フレグランスの世界でもっとも有名な香料が、グラースのバラ。バラの産地、南仏・グラースは別名「香水の街」。バラのシーズンである5月、その街を訪れると得も言われぬふくいくとしたバラの香りが町中から漂ってくると言います。

バラの香水の匂いをイメージすることはできても、実際にフラワーショップでバラを買って香水のようなよい香りはしなかった、生臭かった、などという印象を抱く人も多いかも知れませんね。

香料となるバラと観賞用のバラでは種類が違うのです。観賞用のバラで香りのよいものもありますが、匂いが弱く、香料としてはほとんどつかわれていないようです。

さて、古今東西・香水の人気御三家と言えば、バラの香りを筆頭にした、甘く華やかなフローラルノート、溌剌とした元気な香りでスポーティタイプの香水としてよく使用されるシトラスノート、落ち着いた印象を残すグリーンノートの三種類ということになるでしょうか。

フローラルノートは、大きな潮流に分けてローズ(バラ)系とジャスミン系があります。

ローズ系は女性らしく華やかな香り、愛や恋などをイメージさせるネーミングであることも多いです。

ジャスミン系はバラよりは少しキリッとした感じ。スーツを着てバリバリ働いているけれど、花特有の癒やしの部分や温かみ、優しさも持っているというような。甘すぎる香水が苦手な人にオススメです。

ローズ、ジャスミンなど、その花の持つ香りをつよく打ち出したフレグランスをシングルフローラル系と言います。

他にもスズランやマグノリア、サクラ、スイートピー、スイセンなど、香りを持つ花はたくさんあります。それらの花の香りを組み合わせたものはフローラルブーケ系、また花と果実を組み合わせたフルーティフローラル系と呼ばれる香りもあります。

シトラスノートの香料のもととなる代表格は、レモン、オレンジ、ベルガモットといったところでしょうか。柑橘の果皮から抽出した香料です。エネルギーに満ちあふれ、元気をチャージできそうな香り。爽やかでスポーツシーンにもうってつけです。

グレープフルーツ香料のシングルノートの香水はユニセックスフレグランスとして90年代に大ヒットしたのでご記憶にある方も多いかと思います。

ここ数年はシトラスノートのニューフェースとしてバーベナの人気も見逃せません。バラをつかったコスメが人気のフランスの化粧品会社が火付け役と言われています。

バーベナの細長い葉はレモンのような香りがするのですが、バーベナ自体は果実ではなく、鮮やかな花弁を持つ多年草で、別名「美女桜」。

プッチーニのオペラ「マダムバタフライ」のアリアの歌詞にも出てくるので、オペラ好きな方ならご存じかも知れませんね。幼くして英国海軍士官の妻となった蝶々さん。バラより、バーベナの香りの方がイメージに合っていると言えるかもしれません。

三大人気香水、最後のグリーンノートは、フローラル、シトラスに比べて地味な印象があるかもしれませんね。

香料としては、バジルや、セリ科のガルバナム、意外と感じるかもしれませんが、ヒヤシンスの香りもグリーンノートの香料のひとつです。

ヒヤシンスは花を匂ってみてわかるように、華やかなフローラルノートというより、やや青臭さを感じるのでグリーンノートと言えます。

グリーンノートは葉や草のイメージから「深呼吸したくなるような、癒やし系」のイメージを持ちがちですが、「都会的な香り」と分類される香水の多くがグリーンノートであることを考えると面白い逆転現象ですよね!