18世紀当時のフランス宮廷では入浴の習慣がなく、香水はもっぱら体臭をごまかすためのもので、個性的で重めな動物由来の香料が好まれたとお伝えしました。

海外からフランスへ輿入れしたマリー・アントワネットは大のお風呂好きだったため、動物性のキツい香水は必要なく、バラやユリなど、軽く自然な香りを好んだということ。

ヨーロッパと日本では、好まれる香水がまったく違う、というのは昔から知られた話。西欧諸国でヒットした香水も日本では受けないので、日本未発売ということも多いのだとか。なぜ、そのような好みの差が生じるのでしょうか。

18世紀のフランス宮廷ほどではないにせよ、いま現代のヨーロッパ諸国の人も、日本人ほど頻繁には入浴をしないようです。

日本人は江戸の昔からお風呂好き。80年代に青春時代を過ごした方なら、朝シャン、夜シャンとして一日に二度洗髪することもごく当たり前だったのではないでしょうか。今は「髪に負担をかける」としてあまり推奨されていないので、実践している人は少ないと思いますが…。

とにかく日本人は清潔志向。汗をかいたらデオドランドシートで拭く。さらにデオドランド効果の高いボディ化粧水を使用し、腋窩には汗止めをスプレーを塗布します。

汗染みや汗のにおいを防ぐデオドランド効果の高い下着や使い捨ての汗取りパッドなども売られています。「体臭を匂いでごまかす」発想があまりないので、どちらかというと軽めの香りが好まれる風潮にあるようです。

また、湿度の高い日本では肌がベタベタになりやすい。日本人がお風呂が好きなのは、「早いとこ、ひとっ風呂浴びてさっぱりしたい!」という気持ちの表れかも知れません。

湿度が高いと香りがより濃厚に立ちやすいということもあります。重厚な香りが敬遠され、軽めの香水がもてはやされるには、そんな日本の気候にも関係があるのかもしれません。

お風呂あがりにつけるオーデコロンは70、80年代オシャレな若者の間で大流行しました。

単にパルファンなどより軽めの香水、というだけでなく、フレグランスノートでも、“ニューフレッシュ”あるいは“オーフレッシュ”と呼ばれる、フランスで水を意味する “オー”のついたフレグランスノートが1980年代末に登場しました。

それまでも、オゾン系や、マリン系など、空気や水をイメージさせる軽い匂いの香水はあったのですが、“ニューフレッシュノート”はさらにクセがなく、より多くの人に親しまれるテイストのフレグランスノートとなっています。

中でも、へディオンという香料がつかわれたニューフレッシュノートのフレグランスが、90年代中頃、日本で一大ブームを巻き起こしたことを覚えていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。

ヘディオンというのは実は商品名で、化学薬品としての正式名称は「メチル ディ ハイドロジャスモネイト」。

香料そのものの匂いは生花のようなやや生臭みがあり、全体的にはぼんやりして捉えどころのない香りなのですが、他の香料と合わせることで、ジャスミンやマグノリアなど、華やかなフローラルノートとして生き生きと香り立ちます。

一説にはこのへディオン、「女性ホルモン」を活性化させる香りといわれています。つまり、男性がこのヘディオンの入った香水をつけていると、女性はドギマギしてしまうということ…!

清潔感とセックスアピールとが一緒に手に入ればもう鬼に金棒ですよね!

スマートな現代人には、不潔をごまかすためでなく、あくまで清潔感の演出としてフレグランスをつかって欲しいものです。