調香師という仕事を知っていますか。香水好きなひとだったら、海外ブランドの新作香水に冠された、人気調香師(パヒューマー)の名前をいくつか挙げられるかも知れません。

しかし、調香師さんが関わっている仕事は、そういった新作香水のプロディースとばかりは限らないのです。

実は、あなたのご家庭のいたるところで、調香師さんの手がけた仕事を感じることができるんですよ!

家庭用品の中でなにかしらの匂いのついたもの、それらに調香師さんが関わっていることはとても多いんです。

お菓子にしても、素材そのものの匂いというより、なんらかのストーリーがあって、つよくそのストーリーをイメージさせる匂いが感じられることがよくありますよね。

たとえば…、あくまでも例えとしてですが、こんな感じです。「朝露したたる摘みたてベリータルト」。

タルト本来のバター風味や焼き菓子特有の甘い匂いは想像がつきますし、ベリーと言えばイチゴやブルーベリーなど、ベリー系独特の甘酸っぱい香りを思い起こしますよね。

そこに、さらに「朝露したたる」というストーリーが加えられました。朝露のしたたる様子を香りでどのように表現するか…、そこで調香師さんの出番です。

焼き菓子をつくって、ベリーのジャムを乗せる、というだけでは商品として成立しません。よりバターの、焼き菓子の、ベリーの、風味を感じさせる匂いを加える必要があります。美味しさの正体には、匂いが深く関わってくるからです。

ベリーの香りをより際立たせれば、朝露したたっている感じが出るか、より甘い感じを出すのか、それとも野性味を感じさせるのか、わずかに草の香りもするのか…。

かくして絶妙な「朝露したたる摘みたてベリータルト」の匂いが完成します。あくまで、例えですが、このようなことが調香師さんの仕事の一部です。

生活の中には、食べ物以外にも多くの匂いが溢れていますよね。香水やフレグランス入り柔軟剤だけに限りません。せっけん、シャンプー、リンス、コンディショナー、食器洗剤…。香りのついた文具などもありますね。こんなところにも調香師さんの活躍があります。

化粧品会社に専属の調香師さんがいる場合もありますし、フリーの調香師さんや、調香師の方が在籍している「香りの研究所」のようなところにお願いして、新商品プロジェクトの香りの分野に関わってもらうこともあります。

香りの元となる香料の組み合わせで、単純な香りならば、素人に近い人でもつくりだすことができます。しかし、先ほどのように商品にストーリー性を感じさせたり、より複雑な香り、深みのある香りをつくるためには、調香師のテクニックとセンスが欠かせなくなるのです。

もし、あなたが、日常でなにげなくつかっている石けん、シャンプーに、単純でない香りの深みを感じたら、そこには調香師の方の技やこだわりが入っているのかもしれませんよ?

調香師の仕事はセンスに左右されるきわめて芸術性の高い仕事だと思われる方もいるかもしれません。たしかに、人に喜ばれる、感動される香りをつくりだすために芸術性は不可欠かもしれませんが、実はある一定の香りをつくるには法則性があって、調香師の仕事には高い計算能力も必要となってきます。

調香師の仕事は薬剤師さんに近いかもしれませんね!